転化の始まる時期
古代における外壁リフォームの主要な担い手であった「土工」という職名は律令体制の崩壊に先立って消滅し、代って「壁塗」「壁工」等の名称が現われ、中世を通じてこれらが左官工事担当者の最も一般的な呼称とされてきました。
しかしこれらの中世的な名称も、やがて現在と同じ「左官」という用語の登場に伴って次第に消滅していく。
ここではまずそのような転化の始まる時期について考察することにしたい。
まず慶長初年までに壁塗り職を意味する左官という語は全く用いられていません。
各種資料からも明らかであるが、特に第二節で見た『旧豊田家文書』で慶長13(1608)年ないし元和二(1617)年になお「壁御大工」「かへぬり惣」「京中壁塗」等の中世的名称の用いられていたことに注目しておきたいと思います。